投資信託の保有期間が長くなって喜んでいいものか

投資信託の保有期間が長くなっているという。
2018年に3.4年と08年以来の長さになったという記事が日経新聞の2月18日朝刊に掲載された。
最近投資信託を買い出した投資家にとってはこれがいいことだという記事に読めるだろう。
少し前の状況を振り返ってみよう。私が指摘したい時期はバブル後からの30年だ。

バブル後の投資信託の多くは単位型の投資信託だった。もちろん、追加型の投資信託もあったのだが、証券会社にとって手数料を稼ぎやすい単位型の投資信託が多く売られたのだ。
単位型は1口1万円で販売される時、そのうちの200円程度は販売手数料が内枠で計算されている。個人投資家は設定時に100万円分の投資信託を買ったつもりでも、投信が設定されて設定されるとすぐに基準価額が9800円ぐらい、評価額で98万円からスタートするが、インターネットなどない時代、しばらく顧客に連絡さえしなければ特に苦情が出ることはなかった。
3年ぐらい経過し満期が来ると償還の連絡をするのだ。
ここで、基準価額が大きく下がると”償還延長”の措置が取られる。「満期を先延ばしにすれば基準価額は戻るかもしれません」という説明だが、実際にはその後回復したファンドは数える程度しかない。

もうわかると思うが、投信の投資期間は昔の方が長かったのだ。

それではなぜ、08年ごろが一番短くなっていたのか。
全てのファンドのデータを取ったわけでもなく、示せるエビデンスもないが体感的なことは一つある。

経験ある投資家が自らファンドを選び投資できるネット証券で投資信託を買い出したことだ。また、ネット証券ではノーロード、つまり手数料無料のファンドが始まったからだ。
ネット&ノーロードが個人投資家の自由とチャンスを広げた。

証券会社にとってはノーロードでのサービスができるのは信託報酬という年率換算で投資信託の財産から日々差し引かれ、決算時に投信会社より支払われるお金によって収益を確保できるからだ。しかし、それは証券会社にとって「入り口は無料にするけど、ずっと持っていてね」という考えが前提となっている。そんな証券会社の下心を知ってか知らずか、早期のネット投資家はしっかりネット証券の期待を裏切りタイミングを見計らった投資を始めていたのだ。

これでは証券会社にとってはたまったものではない。なんとかして長期で投資信託を保有させなければならない。しかも投資信託のもう一つ大きな販売チャネルである銀行は投資経験のすくない顧客の預金からの移し替えを勧めることで安定的に残高を積み増していった。銀行にとっても貸出金利収益が増えない中で安定した収益となる信託報酬はとても魅力ある商品だった。
証券会社の営業マンにとってはある程度まとまった資金を持つ顧客のところへ営業をかけなければ手間に見合うだけの手数料収入があげられないが、銀行では窓口に顧客が来たところで声をかければいいので効率がいい。まさにカモがネギを背負ってやってくるようなものだ。

店舗型の証券会社、いわゆる対面証券にとってはこんな面白くない話はない。

NISA、英国のISAを参考にしたと言われるこの制度、「長期投資はいいものだ」と言われていることを最大限に利用した制度だ。誰が利用した制度か。よく判断してほしい。

次回、この制度とその裏に見える本質を考えてみたいと思う。

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